「外国人労働者が1年間で17万5000人増えた。英国人労働者の雇用が危ない」「東欧からの移民数が47%減少した。次はEU圏外の移民を減らそう」̶̶世界的不況がまだまだ続くと予想されるなか、英国では今、外国人労働者に対する風当たりが日に日に強くなっている。はたして移民とは、英国人の日々の生活を脅かす存在なのだろうか。今回は、ロンドンでコツコツ真面目に働く4人の移民労働者にインタビュー。彼らはどんなことを考えて祖国を離れ、どんなことを考えながら日々を過ごしているのか。統計を見ただけでは分からない、移民労働者たちの心の内を覗くことで、移民大国、英国のもう一つの姿を見てみよう。(執筆: 内山 久恵)
アラシッドさん 28歳 アルジェリア出身
| アラシッドさんの1日のスケジュール | |
| 05:30 | 起床 |
| 06:30 | 車で出勤(友人と3人で相乗り) |
| 07:00 | 仕事開始 ─お客さんが駐車しに来たら会計をして、鍵を預かり車を移動させる |
| 14:30 | 仕事終了(終了時間は日によって異なる) |
| 15:30 | 家に帰ってシャワーを浴びる |
| 17:00 | 町に繰り出して、ショッピングをしたり友達と会ったり。たまにはサッカーをすることも |
| 21:00 | 帰宅。またシャワーを浴びる。その後はテレビを観たり、友人と一緒にご飯をつくって食べる |
| 23:00 | 就寝 |
「僕が英国で働いていて思うのは、英語ができない外国人労働者を冷遇する派遣会社が多いということ」と主張するアラシッドさんは、北アフリカのアルジェリア出身。フランスの大学を卒業してからは英国でさまざまな職に挑戦してきた。現在は駐車場の管理人として働いているアラシッドさんが、ホテルの清掃員時代の苦労話を聞かせてくれた。「ホテルの清掃員をやっていたころ、派遣会社が僕にくれた給料は、一部屋たったの1.8ポンド。一部屋掃除するのに30分はかかるし、塵一つ残さないようにしないとチェックが来てやり直しをさせられた。言いたい放題文句を言ってくるけど、そのころは英語もまだうまくなかったから反論できないしね。結局長くは続かなくて2カ月でやめたよ」。
英語ができない人に対する扱いの冷たさは、駐車場管理をしている今でも感じることがある。「僕の同僚は東南アジア出身で、かなりなまりが強い英語を話すんだ。そういう人に接するとき、ほとんどのお客さんは丁寧に接してくれるけど、たまに急に態度が変わって冷たくなる人がいるんだよね」。それでは、他の国ではどうなのだろう。「僕はフランス語圏で生まれ育っていてフランス語を話すから、大学はフランスの学校を選んだんだ。だけど英国よりもフランスの方がそういう傾向は強いと思ったな。言葉をちゃんと話せない外国人はかなり冷たい目で見られていたね。だからフランスに残って働こうとは思わなかった。英国でもそうだけど、やっぱり言葉が通じないと不信感を持ってしまうんだろうね」。やはり海外で暮らすうえで、言語の壁というのは大きくのしかかってくる問題のようだ。
現在の駐車場管理の仕事は、ホテルとの契約で得たもの。2年契約の固定給を受け取っており、生活は安定。労働組合もしっかりしていて、何か不満があれば相談にのってくれるから安心、と大方は満足している。将来のことはまだ決めていないが、まだ帰国はせず、もっと良い仕事に就けるようにがんばるつもりだという。
アラシッドさんの1カ月の家計簿
勤務時間: 8時間(日。基本的に週5~6日で、時には日曜日も働くが休日手当がつく)
給与: 1000ポンド(月)
| 家賃 | 300ポンド(友人とシェア) |
| 食費 | 400ポンド |
| 交通費 | 93ポンド(トラベルカードとトップアップ) |
| 電話代 | 35ポンド |
| 衣服代 | 150ポンド(月によって違う) |
| 娯楽費 | 60ポンド(飲酒はしないがタバコを吸う) |
| 貯金 | 100ポンド(余裕があれば) |
ラジクマールさん 42歳 スリランカ出身
| ラジクマールさんの1日のスケジュール | |
| 05:30 | 起床 |
| 06:30 | 車で出発 |
| 07:00 | 開店 ─レジ準備、書類整理、牛乳配達の受け取り、商品陳列など |
| 15:00 | 終了 ─次のシフトの人が交代で来てくれる。従業員3人のうち2人は常時、店の中に居るようにシフト設定。そのため時には1人が朝から晩までいたりする |
| 16:00 | 子供を学校に迎えに行く |
| 17:00 | 家でくつろぐ ─奥さんが友人を招待して一緒に夕飯を食べたりすることも |
| 23:00 | 就寝 |
移民が多く集うロンドン東部でOFF LICENSEのオーナーとして働くラジクマールさん。ロンドンでの日々の生活について聞いてみると、「やっぱり周りに似たようなお店がいっぱいあるからお客さんの取り合いだね。それに牛乳や卵やガソリンなど、生活必需品が高すぎて、結構苦労しているよ。家も買っちゃったけどローンだし、車のガソリン代なんか毎週40ポンド以上かかってしまって大変なんだ」。奥さんと子供に恵まれて幸せな日々……というわけにはなかなかいかないようだ。
ラジクマールさんの出身国スリランカはインドに程近い島国。30年にわたり戦争が続く同国は治安も不安定で、日に数十人が銃撃戦により亡くなるという痛ましい事件も勃発している。そんな環境で生まれ育ったラジクマールさんは、もともとガソリンスタンドで働いていたのだが、人の下で働くよりも自分のお店を持ったほうが収入が増えると考え、一国一城の主となることを決意。より良い生活を求め、奥さんと子供を連れて渡英した。英国で1年間、語学学校に通っていたために、英語でのコミュニケーションに苦労することはなかったそうだ。しかしショップのオーナーともあって、休日はほぼゼロ。収入についても「貯金するのは難しいね。すべてが高いからお金はつくって消費するだけだ」と厳しい現実を訴える。
それでも英国にいるのはなぜなのか。子供が学校に行っていることや、家を買ったことで生活基盤がこちらにあること、それにスリランカに今、戻ったら戦乱に巻き込まれてしまうかもしれないという不安、そうしたさまざまな理由でロンドンを離れないのだという。
それでも基本精神は「人生を楽しむこと」。仕事が終わったら子供を迎えに行って毎日家族と一緒にご飯を食べるのが日課というラジクマールさんは、日々の生活の苦しさを吹き飛ばしてしまうほどの明るい性格の持ち主だ。家族と一緒にいればどんなつらいことも乗り越えられる。「人生楽しまないと!」という力強い言葉に、こちらまで励まされてしまった。
ラジクマールさんの1カ月の家計簿
勤務時間: 平均8時間(日。だいたい週6日)
利益: 平均1600ポンド(月)
| 家賃 | 700ポンド(住宅ローン) |
| 食費 | 600ポンド前後(かなりまちまち) |
| 交通費 | 200ポンド(ガソリン代。税込み) |
| 電話代 | 30ポンド |
| 衣服代 | ほとんど買わない(2カ月に1度くらい) |
| 娯楽費 | 30ポンド(酒代。1日ビール1缶程度) |
| 貯金 | 0(余裕なし) |
シャフィールさん 29歳 バングラディシュ出身
| シャフィールさんの1日のスケジュール | |
| 07:00 | 起床 |
| 07:30 | スーパーマーケットでの仕事開始。(月火水) |
| 10:30 | 仕事終了。ご飯を買って移動、大学へ(大学がない日は11:00まで働く)。 英語の授業(水木金) |
| 12:30 | 授業終了 |
| 16:00 | 新聞配達のバイト |
| 19:30 | 帰宅。ルームメイトとともにご飯をつくって食べたり、テレビを観たりしてくつろぐ |
| 24:00 | 就寝 |
「ロンドン・ライトです」──夕方の帰宅ラッシュに合わせ、街中に響く声。バングラデシュ出身の学生、シャフィールさんは、平日の午後4時から7時半まで路上で新聞を配るアルバイトをしている。それに加え朝7時半から10時半まではスーパーの店員のアルバイトを、10時半から12時半までは大学で英語の勉強を、それぞれ週3日ずつ、曜日をずらし行う日々を送っている。そんな多忙な毎日を過ごしているシャフィールさんだが、英国に来る前はアラブ首長国連邦(UAE)の首長国の一つ、ドバイ首長国でレストランのシェフとして働いていたのだそうだ。そのころの給料は1カ月2000ディルハム(約5万3000円)だったが、物価の安いドバイでは生活に困ることはなかったという。
ドバイでは、近所の人とはヒンドゥ語やウルドゥ語で、職場では英語で会話をしていた。そのため現在シャフィールさんが操る言語は、母国語のバングラ語と合わせ4つ。語学に堪能な彼だが、ロンドンでの生活については意外や否定的である。「ロンドンで暮らすのは大変だよ。天気は悪いし、物価は高いし、みんな冷たいし。それに比べてドバイは僕にとってすべてが完璧なんだ。経済的な面ももちろんだけど、毎週金、土曜は飲み放題のマーケットが出るし、町で酔っ払って倒れても必ず誰かが拾って家まで届けてくれるんだ」。
それでもロンドンに来たのは「学位を取るため」。「ドバイや母国でも学位は取れるけれど、ヨーロッパ、特に英国の大学の学位は、将来もっと良い仕事をもらうためにはとても有利だからね」と明瞭な理由を持っている。現在は働きながら、大学に通うための資金を溜めつつ、生活費を自分で工面し暮らしている。大学準備金以外に貯金をする余裕はないが、大学でホテル・マネジメントを学んだら再びUAEに行き、またシェフとして働くのが夢だそうだ。
シャフィールさんの1カ月の家計簿
勤務時間:
スーパーマーケット 10時間(週)、新聞配達 10.5時間(週)
給与:
スーパーマーケット 220ポンド、新聞配達 335ポンド(月)
| 家賃 | 40ポンド(シェア) |
| 食費 | 150ポンド(外食が多い) |
| 交通費 | 60ポンド (Zone2~3のトラベルカード とトップアップ) |
| 電話代 | 35ポンド |
| 衣服代 | 10~15ポンド |
| 娯楽費 | 10~15ポンド |
| 貯金 | 0(余裕なし) |
| 大学準備金 | 250ポンド (来年からの大学授業料3000ポンドの準備) |
カロリーナさん 34歳 ポーランド出身
| カロリーナさんの1日のスケジュール | |
| 06:45 | 起床、朝の支度 |
| 07:30 | 出勤 |
| 08:00 | 仕事開始 ─1フロア全60部屋がきちんと掃除されているかチェックする |
| 11:30 | 掃除されていない部屋、やり直しの部屋をレセプションに1日3回、報告を入れる |
| 12:00 | 休憩 ─お昼ご飯は食堂で購入 |
| 12:30 | 仕事再開 |
| 16:00 | 仕事終了 |
| 16:30 | 帰宅 ─家でテレビを観たりしてくつろぐ。料理も以前よりはするように |
| 23:00 | 就寝 |
東欧諸国の欧州連合(EU)加盟後に急増した英国へのポーランド移民。ロンドン西部ケンジントンのホテルで働くカロリーナさんもその中の一人だ。ポーランドで事務員として10年間、その後、ベルギーのイチゴ農園で半年間働いた。友人やもともと住んでいた弟の勧めを受けて渡英。現在はその弟と共に暮しているという。今の職場も弟の紹介だ。
つい最近、清掃員からスーパーバイザーに昇格したばかりのカロリーナさん。生活の変化について聞いてみた。「清掃員として働いていたころは、朝も7時からで早いし、忙しくて帰っても料理をする気が起きなかったの。それに比べたら今の仕事はずっとましね。お給料は上がったし、仕事内容も部屋をチェックして回るだけ。ポーランドと比べたらロンドンでの生活はかなり楽になったわ。ポーランドで働いていた時は、月給がたったの600ズヴォティ(約1万8000円)。賃金が安すぎて、生活費を払ったら後にはもう何も残らなかったの」。
現在、ポーランドの経済は急激な成長を見せており、一時期は100万人もいた英国への出稼ぎ労働者は、現在50万人以下にまで落ち込んでいるという。その点を問うと、首を傾げながらこう答えてくれた。「経済が回復しているって言っても、少なくともポーランド全体ではないわね。私の地元は人口8000人の小さな町なんだけど、いまだに就職難が続いていて何も変わっていないと母が言っていたわ」。統計では見えない現実が、この言葉から浮かび上がってくる。
現在は弟と2人暮しだが、弟が友人をたくさん連れてくるので、将来的には1人でフラットを探して住みたいと考えている。「ロンドンでの生活はすごく気に入っているの。可能ならばいずれは市民権も取りたいくらいね」と語るカロリーナさん。実は最近、マネージャーから更なる昇格の話を持ち掛けられたのだとか。3週間の長期休暇までは週7日、フルで働き、休暇はポーランドの実家で家族とゆっくりと過ごしたいとうれしそうに語ってくれた。
カロリーナさんの1カ月の家計簿
勤務時間: 平均7.5時間(日)
給与: 平均1000ポンド(月。週5シフトの場合)
| 家賃 | 0(弟が全額払っている) |
| 食費 | 150ポンド |
| 交通費 | 126ポンド (Zone 1~3のトラベルカードとトップアップ) |
| 電話代 | 55ポンド |
| 衣服代 | 100ポンド |
| 娯楽費 | 20~30ポンド(タバコ、週末の飲酒など) |
| 貯金 | 定期的ではないが、余ったら随時 |
| カード支払い | 160ポンド(母国ポーランドで) |
| 母への仕送り | 100ポンド |
*勤務時間・給与はおおよその目安です。



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音を紡ぎ出す幻想の世界







セント・マイケルズ・マウント
ローチ・ロック
ハーラーズ・ストーン・サークル
英国屈指のパワー・スポット、グラストンベリーのハイライトとも言える場所。14世紀に建築された大天使ミカエルの塔が聳え立つ丘の頂上では、UFO目撃談や宇宙人との遭遇体験など数々の超常現象が報告されており、アーサー王伝説からの引用も相まって「異界への入り口」とも言われている。麓には聖水が湧き出るチャリス・ウェルという泉があり、キリスト最後の晩餐で使われた聖杯が沈められているという伝説が残る。
直径335メートルという巨大な環状列石で知られる、ウィルトシャー州にある小さな村。ここから約30キロ離れた場所に位置するストーン・ヘンジと並んで、世界遺産に指定されている。巨石が1カ所に集まっているストーン・ヘンジとは対照的に、こちらは村全体を覆うかのように、広範囲にわたって100個近い巨石が点在しており、その大きさや形にもかなりバラつきがある。この巨大なサークルの内側に、さらに2つの小規模な環状列石があるという二重構造だ。
ところが近年になって、このペイガニズムを復興させようという動きが出てくる。季節ごとの祭祀や民間伝承、自然崇拝といった古くからの伝統を生かしながらも、より時代に合わせた新しい信仰の形を追い求めるという意味で、この運動は「ネオペイガニズム」とも呼ばれるようになる。これにともない、古代に異教を伝える役割を担っていた魔女の信仰と知恵を復興させる運動も起こり、なかでも20世紀半ば、ようやく魔女禁止令が廃止された英国で、ジェラルド・ガードナーという人物が行った魔女宗教復活運動によって「ウィッチクラフト」や「ウィッカ」という言葉が一般に浸透、ネオペイガニズムの形態の一つとして認識されるようになった。ちなみにウィッカでは、魔術はポジティブな変化のためだけに行われ、これを行う人を「白魔女」と呼ぶ。
心霊学を究めたコナン・ドイル
ライターがドキドキ実体験 





ノーザン・ロック銀行が一時国有化
総額500億ポンドの公的資金を金融機関に注入することを政府が決定
小売大手のウールワースが経営破たん
日産が英国サンダーランド工場で1200人の雇用削減を実施する方針を発表
銀行大手のバークレイズが、4600人の雇用削減を発表
国立統計局が、英国経済が景気後退入りしているとの発表を行う






















キッチン菜園は、台所という限られたスペースでも気軽にでき、育つ過程を楽しみながら食費を浮かすことができる。初心者におすすめなのは、育てやすくて、少量でも料理のアクセントに使えて便利なハーブ類だ。ミントやパセリ、コリアンダーなどのハーブ類はもともと雑草なので、丈夫で栽培が簡単。自家製のフレッシュ・ハーブ・ティーは味も感動も格別なはずで、安く飲めるとくればさらにおいしい。また、ネギも根を捨てずに取っておけば、水に浸してそのまま育てられる。ただ、採光性が栽培の鍵を握るので、日当たりが悪いキッチンでは菜園は難しいかもしれない。
ホリデー先での「良い思い出作り」の鍵を握るのは、宿泊ホテルだと言っても過言ではない。安く済むのにこしたことはないけれど、せっかく休みをとってお金を使うのだから、そんなに質にも妥協したくない……。そんな人は、格安ホテルのサイトを探すよりも、「いかに良いホテルに格安で泊まるか」という点に着目してみては。

また、化粧品類のリサーチを目的に無料サンプルを配っているのが 

新聞を読みたくても、定期的に購入するだけで学生のふところにはズシンと響く。でも、実は主要新聞社のほとんどが学生割引を行っている。まずは読みたい新聞社のウェブサイトに行き、登録して学生割引券を受け取ろう。例えば、「ガーディアン」紙は通常の1部60ペンスが20ペンスになるし、「オブザーバー」紙では1.50ポンドのところを60ペンスで購入できる。
「贅沢」の本質を知る店

英国紳士の「粋」を知る

質実剛健に終わらぬこだわりの数々

飛び地のような静謐な空間

一族の温もりに包まれるひととき

時代とともに変わるもの、変わらないもの

ロンドンに薫り高いコーヒーを

労働階級の人々のソウル・フード











ウィリアム・グラッドストン元英国首相に「神さまの食べもの」と称されたクロテッド・クリーム。その歴史は長く、紀元前500年ごろにレバノンからフランス北西部の地域に製造方法が伝えられ、その後、この食文化はイングランド南西部に位置するデボン州とコーンウォール州に定着した。英国のほかの地域と比べ、比較的温暖で日照率が高い両州は肥沃な土地にも恵まれ、クリームの製造に欠かせないジャージー種が多く飼育されていたことから、クロテッド・クリームはこの2つの州の特産物になったという。それぞれ「デボンシャー・クリーム」と「コーニッシュ・クリーム」と呼ばれ、現在「本物」のクロテッド・クリームが製造されているのは両州とレバノンだけだと言われている。
120年の伝統の味をご家庭で


頭から背中にかけ、一直線に伸びる白毛が特徴のヴォージュ種は、フランス北東部アルザス地方のヴォージュ山脈を中心に生息する牛。この種は、17世紀に迎えた30年戦争時代(1618~48)にスウェーデン人がフランスに持ち込んだものが起源とされている。ヴォージュ山脈の気候が寒さの厳しい北欧諸国の気候に酷似していることから同種はめきめきと増殖し、20世紀初めには12万頭を超えた。
世界有数のチーズ生産国であるフランスでは、数千種類にも上るチーズが作られていると言われている。ここで紹介したいのは、アルザス地方やスイスとの国境に位置するフランシュ=コンテ地域圏、ヴォージュ山脈付近のヴォージュ県などを代表する、ヴォージュ種のミルクを使用して作られたチーズ、「マンステール」。マンステールは、フランス製のワインやチーズなどに対して与えられる認証「AOC」を持つ、アルザス地方唯一のチーズとしても有名だ。
世界三大料理の一つにも数えられるフランス料理だが、それに欠かせない食材の一つがバターである。マンステール・チーズに比べると生産量は少ないものの、アルザス地方ではバターも生産されていて、中でも南部に位置するリンタル村で作られるものが有名だ。豊かな自然に囲まれ、高山の牧草を食みながらスクスク育ったヴォージュ種のミルクから作られたバターには、ほかにはない自然の味わいがある。目印は、表面に付いたかわいい牛のマーク。このバターがアルザス料理に合うのは言うまでもない。


世界で最も有名な牛の品種といっても過言ではない、ホル スタイン種。同種の原産地は、ライン川河口の低湿地であるオランダのフリーネ地方と、ドイツ北部のシュレスヴィヒ=ホルシュタイン州に当たる地域である。あまり知られていないが、この品種を立派な乳牛に育て上げたこの2つの地方の名を冠した「ホルスタイン・フリーシアン」というのが正式名称だ。
消費者が、いつもの牛乳からビオ牛乳へと切り替えるのは簡単なこと。だが農家にとって、その変化は一体どんな形で現れるのだろう。ドイツ北西部、ノルトライン=ヴェストファーレン州で酪農を営むユリアン・トーレンさんは「ビオ牛乳作りが難しいのは事実。でも、私は消費者の人生を『食』の面から応援していきたい」とその情熱を語る。
普通の牛乳と比べ、栄養価の面でも味の面でも勝っているビオ牛乳だが、それは飼育方法に秘密があるようだ。トーレンさんによれば、乳牛が緑の草を食べれば食べるほど、乳の色がより白く、美しく変わるという。「生まれてすぐの仔牛は母牛の母乳で育て、十分な敷地の中で放牧し、無理のない搾乳サイクルを組むことで、牛自身の体力が付いてくる。すると、その牛から取れる牛乳にはたくさんの栄養が含まれ、風味も豊かになるのです」。






