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Mon, 30 December 2024

辻井 伸行 / 諏訪内 晶子 / 庄司 紗矢香 - ウィグモア・ホールで開催されるエイベックス・リサイタル・シリーズに出演

辻井伸行 諏訪内晶子 庄司紗矢香

ロンドン有数の繁華街にありながら、静けさが漂う瀟洒な建物。客席数は550とコンサート・ホールにしてはこぢんまりとしているが、1901年の開場以来、歴史に名を残す演奏家たちが極上の音楽を奏でてきた。この空間で4、5、6月の3カ月にわたり、「エイベックス・リサイタル・シリーズ」と銘打って日本を代表する音楽家3人のリサイタルが開催される。今回は、4月に行われたコンサートを大成功に導いたピアニスト辻井伸行に加え、5月と6月にそれぞれ演奏を行うヴァイオリニストの諏訪内晶子と庄司紗矢香にインタビュー。演奏活動、そして普段の生活などについて話を聞いた。

avexWigmore Hall
36 Wigmore Street, London W1U 2BP
Tel: 020 7935 2141
Bond Street/Oxford Circus 駅
https://wigmore-hall.org.uk

ピアニスト 辻井 伸行

リサイタル・シリーズの先陣を切ったのは、ピアニストの辻井伸行。2013年には世界有数の音楽祭プロムスに出演、ほかにもイギリスの著名オケとの共演をこなしているだけにロンドナーにもおなじみの顔となっている。4月16日に行われたコンサートの数日後にはリヴァプールで名門ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団と共演。演奏家として多忙な日々を過ごす辻井に、コンサート直前というタイミングで話を聞いた。

ショパンは生涯をかけて取り組みたい

PROFILE
NOBUYUKI TSUJII
東京都生まれ。幼少期よりピアノを始め、7歳で全日本盲学生音楽コンクール器楽部門ピアノの部第1位受賞。 2005年、ショパン国際ピアノ・コンクールでポーランド批評家賞を受賞。09年にはヴァン・クライバーン国際 ピアノ・コンクールで日本人初となる優勝を飾った。11年には米ニューヨークのカーネギー・ホールでリサイタ ルを開催、13年には世界有数の音楽祭プロムスで絶賛されるなど、世界を股に掛けて活動中。

英国での演奏活動についてお聞かせください。

イギリスでの初めての演奏は2010年12月、ストーク・オン・トレントでのBBC フィルハーモニックとの演奏会です。佐渡裕さんの指揮で、チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」を演奏しました。その後も同オーケストラとは2011年2月にマンチェスターで共演、3月には日本ツアーを実施。全10回の予定でしたが、5回終えたところで東日本大震災が起きてツアーは中止になり、帰国していくオーケストラと再会を約束して別れました。日本での再会を果たしたのが2013年5月、同年7月にはプロムスにも出演しました。BBCフィルとはほかにも何度も演奏していますし、2012年にウラディミール・アシュケナージさん指揮のフィルハーモニア管弦楽団と、2014年にはヴァシリー・ペトレンコさん指揮でロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団と共演しました。ただ、これまでの演奏会はオーケストラとの共演なので、ソロ・リサイタルは今回が初となります。

2013年にはプロムス・デビューされました。プロムスは通常のコンサートとはひと味違う雰囲気を持っていると思いますが、辻井さんはどのように感じられましたか。

イギリスは、例えばアメリカと比べると、お客様が冷静な感じはしますね。でもプロムスはリラックスして楽しんでいる雰囲気があって良かったですよ。とても広い空間で、たくさんの人がリラックスした気分で楽しんでいる雰囲気を感じました。拍手を含めて、お客様の反応はほかにはない圧倒的なものでした。震災の後ですし、BBCフィルとの共演ということで、こちらも気持ちが入っていました。

4月16日にはウィグモア・ホールでリサイタルを開催されます。

ウィグモア・ホールは客席で聴いたことはありますが、ステージで演奏するのは初めてなので、とても楽しみです。室内楽のホールとして世界的・歴史的に名高い会場ですから、耳の肥えたお客様がいらっしゃるのかな、と思っています。

ウィグモア・ホールで演奏される曲目はいずれもショパンですが、どのようにして決められたのでしょう。

ショパンは自分にとって生涯をかけて取り組みたい作曲家の一人です。華麗なテクニックと、ロマンティックで美しい音楽が大好きです。初めて挑戦した国際コンクールは、 17歳になったばかりのときのショパン・コンクール。ショパンの母国でショパンを弾きたい、という一心からでした。 今回、このプログラムで1月から日本全国をツアーしてきて、直前にベルリンで録音もしますので、万全の状態でウィグモア・ホールに臨みます。

ウィグモア・ホールで演奏する辻井さん
ウィグモア・ホールで演奏する辻井さん

同じリサイタル・シリーズという形で演奏される諏訪内晶子さん、庄司紗矢香さんについてはどのような印象をもっていらっしゃいますか。

お二人とも有名な国際コンクールで優勝して、世界的に活躍していらっしゃる方ですね。僕は子供のころにヴァイオリンを習っていたことがありますし、とても尊敬しています。そうした方々と一緒のシリーズで演奏させていただけるのは、とても光栄です。お二人の評判はよく存じていますが、生演奏を聴いたことはありません。僕もぜひ客席で聴きたいのですが、今回は自分の演奏会とぶつかっているのが残念です。ウィグモア・ホールのような素晴らしいホールで聴ける人たちがうらやましいです。

リサイタルの後にはすぐリヴァプールでのコンサートが控えています。このコンサートはどのような経緯で決まったのでしょうか。

 コンサートについては、おかげさまで国内外から声をかけていただいていますが、体が一つしかないので、すべてをお引き受けするわけにもいきません。特にオーケストラとの共演となりますと、先方が望む曲と僕が弾ける曲とが一致しないといけませんし。その意味では「ご縁」が大切だな、と思います。リヴァプール・フィルとは以前も共演しましたが、とても幸運でした。イギリスのオーケストラらしく金管が輝かしいのに加え、弦の厚みといい、木管のうまさといい、とても良いオーケストラです。メンバーは、アメリカのような陽気さはありませんが、じんわりと親しさを表現してくれる人たちで、日本ツアーの最後には大きな色紙に全員の寄せ書きをいただいて感激してしまいました。再会が楽しみです。

前回共演した首席指揮者のヴァシリー・ペトレンコさんは、とても背が高くて優しい人です。とにかく一瞬ですべてを理解して合わせてくださるので、安心して自由に演奏することができます。今回共演する指揮者のダレル・アンさんとは初対面ですが、とても評判が高い人だとうかがっています。若い人ですし、どんな演奏ができるか、とても楽しみですね。

リヴァプールで演奏されるベートーベンの「皇帝」に対する思いをお聞かせください。

スケールが大きくて華やかな第1楽章と、はつらつとして華麗な第3楽章は、いかにもベートーベンらしいですね。「皇帝」というニックネームは後世の人が付けたものだそうですが、よく似合っていると思います。でも、第2楽章の繊細で優しい美しさも僕は大好きで、弾いていて感動してしまいます。

幼少期から音楽に専心されていらっしゃいますが、音楽以外の趣味や楽しみにしていることはありますか。

音楽に専心したというよりは、ピアノが楽しくて仕方なかったようです。小さな子供のころはご飯よりも好きだったみたいで、両親は食事のためにピアノを弾くのを中断させようと苦労したそうです。今もピアノを弾くのは楽しみですが、ツアー中はピアノがいつでも手元にあるわけではないので、プールやジムで体を動かして気分転換を心掛けていますし、日本でまとめてオフがとれたら、友人と一緒に自然の豊かな場所へ出掛けたりします。僕は日本食、特にお寿司が大好物ですが、国外に出ると不思議と日本食を食べなくなって、代わりにその土地の旬の食べ物、飲み物をいただくようになりました。日本では出てこないような料理があったり、地元の人たちや外国からの旅行客と思いがけない交流ができたりして、これも楽しい気分転換ですね。

EXILEのATSUSHIさんとシングルを共同で制作、NHKの「真田丸紀行」のピアノを担当されるなど、多方面での活躍が目立ちます。

こうしたお仕事も、タイミングと内容が合わないと実現できませんので、ご縁をいただけることにいつも感謝しています。自分一人の計画や希望だけでできることではありませんが、2020年の東京オリンピックの開会式で演奏させてもらえたら、というのは夢の一つです。そのためにはもっともっと実績を積んでいかねばなりませんね。

 

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